夫婦における共依存の典型として、よく挙げられるのがアルコール依存症の夫と、その妻です。
夫によって被害を受けるのが分かっているのに、妻はその世話に自分の価値を見出していて、夫から離れられなくなっている状態です。
これは一見、献身的な妻のようにも見えますが、結果的に夫のアルコール依存をやめさせる機会を妨害しているともいえます。
夫の依存症が治ってしまったら、自分の存在価値はなくなってしまうからです。
アルコール依存症だけでなくDVやギャンブル依存症でも同じで、ある人間関係に囚われ、逃れられない状態にあるということが共依存の特徴だと思います。
親子間なら、子どもを支配しコントロールする親と、親の愛情を得るため従う子どもの関係もそうです。
共依存によって自立できなくなった子どもは、人間関係がうまく築けなくなったり、パーソナリティ障害が現れたりもします。
共依存は自分の気持ちを麻痺させていく
夫と共依存に陥っている妻は「この人は私がいないとダメだから」と思っていることが多いようで、私の母も例外ではありませんでした。
さらに母は、父のアルコール依存もDVも、いつか治るものと考えていて、「私が治してあげなくちゃ」という使命感があったように見えました。
もちろん簡単に治せないから依存症というわけで、泥沼にはまっていきます。
今になって思えば、母はおそらく、父によって自分の承認欲求(必要とされたい気持ち)を満たしていたのでしょう。
離婚した途端、すぐに別の男性に依存するようになったため、もしかしたら男性であれば誰でも良かったのかもしれません。
共依存がどうして起こるのかというと、自己が確立されておらず、他者と自分の境界線が曖昧になっていることが原因ともいわれています。
過干渉な親のもとで厳しく育てられると、子どもは親や周りの評価でしかものを考えられなくなり、自分はどう思うか、どうしたいかという自分自身の気持ちが分からなくなります。
相手にひどいことを言われたり暴力を振るわれたりしたら、普通は逃げたり怒ったりすると思いますが、自分の気持ちが麻痺しているので、どうしたらいいのか分からない状態なのです。
もしそのような状態になったときには、きちんと自分の気持ちと向き合って、どう感じたのか、どう思って、これからどうしたいのかを考える練習をしていく必要があります。
共依存の夫婦が子どもにもたらすもの
夫婦が共依存に陥っている家庭の子どもは、日常的に夫婦喧嘩を目の当たりにし、混乱し、傷つきます。
時には自身も罵倒されたり、ほったらかしにされたりもします。
こんな家に生まれたくなかった。こんな親のようには絶対になりたくない。家庭なんて持ちたくない。
成長するにつれて、私が抱いていた父に対する恐怖も、母に対する不信感も、憎しみに変わっていきました。
このような環境で育った子どもは、抑うつなどの症状が出ることもあります。
さらには、親と同じく共依存に陥るような相手をパートナーに選ぶことも多く、自身が親の立場になったとき、同じことを繰り返す場合もあります。
子ども自身もまた、自分の気持ちが麻痺しているからです。
この連鎖から抜け出すには、先ほど書いたように、きちんと自分の気持ちに向き合い、少しずつ考える練習をするしか方法はないように思います。